子どもの心を 一生のあいだ
自分の中に持ち続けるということは
知りたいという好奇心や
わかる喜び 伝えたいという気持ちを
持ち続けるということ
・・・・
おとなのしるしに
懐中時計をつけてもらった
そのとき僕10歳で
でも 何時におとなになったらいいのか
よくわからなかった
―ブルーノ・ムナーリ
10歳の心を持ち続けたまま、 空想と科学 、 芸術と工業、 絵画と彫刻とデザインの聞に、 秘密のトンネルを掘って、そこをひょうひょうと行き来していた、不思議な天才プルーノ・ムナーリ。百もの異なる顔を持って、人々を穏やかに煙けむに巻きつつ、さまさまな分野に優れた仕事を残し、1998年、91歳の年に、静かにこの世を旅立っていった、プルーノ・ムナーリ。
ムナーリは、その生涯後半の、半世紀近い時間をかけ、本や、新聞や、雑誌や、パンフレットに、そのウィットに富んだ極上の知恵を散りばめるようにして、 たくさんの文章を書き記しました。本書 『ムナーリのことは』 (原題 Verbare Scritto 直訳:書き言葉で書かれた話し言葉) は、 そのおびただしい数の本や随筆や短文の中から、 自みずから言葉を選んで再編集し、 1992年に出版された、 ムナーリ特選短文集です。
日本の俳句や、世紀末ウィーンの風刺作家カール・クラウスの格言を彷彿とさせる、ムナーリ特製の言葉の数々は、人々のひらめきの導火線に火をつけて、さまざまなテーマに、新しい光を投げかけます。ムナーリは、「芸術」から「テザイン」まで、また「どうにも活用できそうもないものに価値をみつけること」から「価値をおおいに活用すること」まで、縦横無尽に広がるテーマを提供して、読者のあたまを心地よくこんがらかせます。そうしたうえで、ムナーリの言葉は、読者の記憶の中にある、ものごとの真髄を、次々と射抜いてゆくのです。
そのムナーリの珠玉の言葉を、
かつて10歳だったあなたに、
そして、今10歳の君に、贈ります。
阿部雅世(訳者 まえがき より抜粋)
阿部雅世訳 ブルーノ・ムナーリの本
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